■第027号■辣韮・転失気・般若湯(らっきょう・てんしき・はんにゃとう)

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□■□■ 居酒屋おやじの知ったかぶり。料理と酒とウンチクと ■□■□
■□■ 第027号 ■□■
【 辣韮・転失気・般若湯】
             2006/6/12 (月)
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■いらっしゃいませ。
すみません、おまたせしまして。
ラッキョウ(辣韮)の塩漬け、召し上がりますか。漬けてから
まだ2週間のものですが。
『小生は、ラッキョウを食したあとのテンシキが気になるゆえ、
少量にしてくれたまえ。』
はぁ。テンシキですか。もしや,あの「転失気(テンシキ)」。
落語にもありますね「転失気」。私みたいな知ったかぶりが
でてまいりますねぇ。
『うむ。それから、般若湯を少し所望いたす』
へい。「はんにゃとう」と きましたか。それでしたら、
呑酒器(テンシキ)をご用意しなくてはなりませんな。
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今日の品書き(目次)
【1】今年も辣韮(ラッキョウ)塩漬け
【2】五葷と五戒
【3】般若湯(はんにゃとう)
【4】落語・「転失気(テンシキ)」
【5】波の音と潮の香りの釣りマガ
【6】酔中歌(あとがき)
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【1】今年も辣韮塩漬け
梅雨に入りました。
梅雨の頃になると梅を漬ける作業が例となっています。
今度の週末には梅を漬けます。今年は70kgぐらい。
梅雨が明けるころには土用干しを経て梅干に。
毎年おなじ作業の繰り返しです。
先週は実山椒の佃煮を作りました。
1年分を作り置きします、とは以前申しました。
(第005号・水飯)http://www.tate-mono.com/2006/06/post_19.html  
ラッキョウ(辣韮)の塩漬けは先々週。約30kg。掃除に少し
手間が掛りますがあとは そう難しい事はありません。
そろそろ、召し上がれますが、時がたてば次第にうまくなります。
http://www.tate-mono.com/2006/06/post_20.html  
私のやり方は、荒漬けとして一度は塩漬けにします。
その塩漬けのものも、独特の風味と歯ごたえが
棄てがたいのですが、
たまり漬けや甘酢漬けなどにするときは、
荒漬けしたものを少し塩抜きをして漬け込みます。
コツというほどのことではありませんが、
掃除する際に根は殆ど取りますが、付け根の部分は
切り落とさずに荒漬けをします。
そこから塩がしみ込んで塩辛くなりすぎるのを防ぐためです。
食べる前に切ることにしています。
ラッキョウ(辣韮)は中国原産ですが、
日本に伝えられた時期は定かではありません。
平安時代の『新撰字鏡』(892年)に「ナメミラ」とあるのが
ラッキョウのことで、これが初見とされています。
漬物や煮物などの食用として江戸時代に広まりましたが、
古くは、もっぱら薬として用いられていました。
薬効は健骨、殺菌、利尿、発汗、整腸、駆虫などなど。
ユリ科アリウム属(ネギ属)の野菜ですから、韮(ニラ)や
大蒜(ニンニク)などとおなじ仲間です。
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【2】五葷と五戒
「不許葷酒入山門」(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)と
記された戒壇石(かいだんせき)が禅寺の入り口にあります。
ニオイがきつい野菜である葷(くん)は修行を妨げるし、
酒は心を乱すので寺の中に入れてはダメ、という意味でしたね。
5種の代表的な葷を、五葷とか、五辛 ( ごしん ) と呼び、
ラッキョウもこれに含まれています。
大蒜( にんにく)、葱(ねぎ )、玉葱(たまねぎ )韮(にら)、
辣韮(らっきょう) の5つです。
山椒 (さんしょう) や 生姜を含むこともありますが、
普通は前述の5種です。
五葷はニオイがきついばかりでなくセイがつきますでしょ、
仏の道は欲を捨てなければなりません、修行の妨げになるわけです。
もとより、仏教には不飲酒戒(ふおんじゅかい)という
戒律があり酒を飲んではいけないのです。
お坊さんかわいそう、なんて同情してる場合ではありませんよ。
不飲酒戒を含む5つの戒律(五戒)は在俗の仏教徒も
守らねばならぬものなのですって。
酒なくて通夜や法事が出来るのか、なんておっしゃる
アナタもわたしも罪深い人なのですな。
「五戒」を列記してみます。
1.不殺生戒(ふせっしょうかい)殺すな
2.不偸盗戒(ふちゅうとうかい)盗むな
3.不邪淫戒(ふじゃいんかい) 淫らなことをすな
4.不妄語戒(ふもうごかい)  嘘をつくな
5.不飲酒戒(ふおんじゅかい) 酒を飲むな
アタシの場合、3番目の不邪淫戒はまあ無しとしてですね、
問題は5番目の不飲酒戒。
でもね、
これは、酒を飲むこと自体も戒めているんだろうけど、
飲酒によって、前の4つの戒を犯しやすくなるから
という理由でもありましょう。
「少しくらいのんだって他の4つの悪いことを
しなければいいじゃん」というのが、居酒屋おやじの解釈。
お坊さんだって般若湯、いただくんでしょ。
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【3】般若湯
般若湯(はんにゃとう)というのは、お坊さんの隠語で
酒のことです。
戒められている酒ではあるが、酒として呑むのではない、
「智慧の湯」として呑むのならよかろう ということで
「般若湯」と名付けたのでしょう。
「般若(はんにゃ)」は「智慧」の意ですが、
梵語の「プラジュニャー」の音訳だそうで、漢字そのものには
意味はないようです。
仏教での般若とは人間の根源的な叡智を意味する「真実の智慧」
であり、頭で理解した「知識」とは違うものだそうな。
知識は積み重ね、蓄えられますが、衰えていくものでも
あるわけです。「智慧」とは先験的なものであり、
失われることはけっしてない、というのが仏教での教えです。
深いでしょう。
今夜も般若湯をいただいてその境地に近づきたいと
思っています。
罰当たりな発言でした。
連日の過ぎたる智慧の湯でわたしの心頭は可也イカレちまって
いるのです。
お客さん、ほどほどになさってくださいまし。
いろいろ調べているうちに、
お酒を飲む事をよしとしている、ありがたいお経がありました。
『未曾有経(みぞうきょう)』というお経です。
「もし酒を飲みて、心を悦ばしめ、善を生ずることあらば、
飲むも戒を犯さず」。
殊更、酒を薦めている というわけではありませんね。
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【4】落語・「転失気(テンシキ)」
落語に「転失気(テンシキ)」というのがあります。
お坊さんをはじめ、市井のいろんな知ったかぶりが登場する、
ゆうめいな噺です。ご存知の方も多いでしょう。
野暮を承知で落語のあらすじ ご紹介しておきます。
上方でも江戸落語でも大筋は変わりません。
■ ある寺の和尚、体の具合が悪いので医者に往診をたのむ。
 医者、和尚にたづねる。
「お腹が張っているようですが、『テンシキ』はございますか」
 和尚、「テンシキ」は無いと答えたが、
実は何の事かわからない。
 薬を処方しておくので、小僧さんに取りに越させるよう
言い残して医者は帰る。
 和尚、小僧の珍念を呼び、テンシキを用意せよと命ず。
小僧は、わからぬので和尚に教えてくださいと乞う。
 和尚こたえて、
 「わしの口から聞くと、お前はまた忘れてしまう。
自身で調べよ」
 小僧は、花屋や豆腐屋、雑貨屋などで「テンシキ」を
尋ねるが、皆知らぬのに知ったかぶりで、トンチンカンな答え。
 寺に戻り「テンシキ」はどこにも無かったと報告。
再び和尚に教えを願うと、
「では、お医者にきいてみなさい。教わって帰ってきたら
話してみよ。お前が正しく覚えているか試してみよう。」
 小僧が医者に訊くと、
「テンシキとは転失気。『傷寒論(しょうかんろん)』という
本に『気を転(まろ)びて失う』とあり、つまりオナラのこと、
屁のこと。」と教えてくれた。
 小僧は一計を案じて、寺に帰り
「和尚さん『テンシキ』とは盃(さかずき)のことでした」
 和尚:「その通り。酒を呑む器、すなわち
呑酒器(てんしき)じゃ。般若湯を客に出すとき、盃を用意せよ、
というのは寺ではちと具合が悪い。これからはテンシキを
出しなさいというからな。二度と忘れるでないぞ」
 再び、医者は和尚のところへ往診に参ります。
 和尚:「先日は、テンシキは無いと申したが、有りました」
このあと噺は
和尚は盃のつもりで、医者は屁の意味で
「テンシキ」についてのやりとりが佳境となってまいります。
最後には 和尚は小僧の珍念に騙されたことを知るのです。
代表的なサゲは、
 和尚 「寺方では盃を呑酒器ともうします」
 医者 「どういう訳で」
 和尚 「この盃をかさねますと、ぶうぶうが出ます」
「ぶうぶう」は江戸のことばでは、酔っぱらいへの
苦情や小言のことです。屁の音と掛けたのは言わずもがなです。
演者によっていろいろなサゲがあります。
■ 医者「この盃はどの時代のもので」
  和尚「なら時代のものでして」
■ 医者「寺方では盃を転失気と言われますか、どういうわけで」
  和尚「両方ともつまみがいりますから(鼻をつまみながら)」
■ 医者「寺方の事でございますから、さぞ古い時代から転失気と
    呼んでおられたのでございましょうな」
  和尚「えぇ。そりぁもぉ、
     なら・へーあん(奈良平安)の時代から」
知ったかぶりのお噺「転失気」のご紹介でした。
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【5】波の音と潮の香りの釣りマガ
波の音が聞こえ、潮のかおりが漂ってきそうな、
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知ったかぶりでは 決してありません。
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【6】酔中歌(あとがき)
♪Here's that Rainy Day
         (Johnny Burke/ Jimmy Van Heusen)
■「不許葷酒入山門」        は
 「葷酒、山門に入るを許さず」 ですね。
  
  これを              
 「許されざる葷酒、山門より入る」とか
 「許されずとも葷酒、山門に入る」 
 という読み方があるそうでして、
 結局、葷酒は寺の中に入っていくわけです。
 
■「戒名」というのは、前出5つの戒律を守る事を
 誓ったときに授かる漢字2文字の名前で、
 本来は生前につけられるものなのですって。
 ●●○○信士や、●●院●●○○居士などの「法名」に
 この漢字2字「戒名」がふくまれるのですって。
 ○○が戒名に当たります。
■梅干、実山椒、辣韮で はなし始めましたが、
 いつの間にやら、法名の事にまで。
 歳を取ると 抹香くさい話に流れがちで、
 申し訳ございません。
 え、臭いますか。辣韮食べ過ぎの転失気。
 アタシじゃありませんヨ。
 徳ちゃんのは磯の匂いだし、
http://baktok.com/mag/
 先ほどのかたかなぁ。
 ご無礼申し上げました。
 
 今夜も ありがとうございました。
  
 

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