■第010号■マヨラーさんへ
「マヨラー」て言うんだってね。「マヨ中」の人を。マヨ中、てぇのは「まよなか」ではなくて「まよちゅう」。 マヨネーズ中毒の略です。
あたしが、今思いついたんですがね。
何にでもマヨネーズ、てのは少し キモい ような気もしますが。
「キモい」というのは、気持ち悪いのか、気持ちいいのか どっちか しばらくの間わからなっかたが、どうも、気持ち悪いほうを言うらしいね。
このような現代用語の基礎知識を、お客様にお尋ねするのはちょいと、憚(はばか)れますし、ましてや したり顔で居酒屋おやじが使ったら、それこそ「キモ〜ぃ」なんて言われかねません。
先日、ウチの若いものが 「これ、ぜんぜん うまいじゃん」なんて抜かすから、全然(ぜんぜん)という語のあとは打消しや、否定的な表現がくるものなのだ。日本語の勉強もしておけ、と叱ってやったんです。
気になったので、辞書で調べてみた。そしたら、アレ いいんだってね。「全然(ぜんぜん)」という語には「すっかり」とか「まったく」とか「非常に」、、等等の意味があって 必ずしも否定的な表現でなくてもいいらしい。
「ぜんぜん愉快だ」、なんていう例文も載っている。(小学館『大辞泉』
・第1版」)
半可通の「知ったかぶり」は いけませんやね。
で、マヨ中 じゃなかった、マヨラーに話はもどります。
◆きょうの品書き(目次)◆
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マヨラーさんへ
- 【1】マヨネーズをご自分で作りましょう。
- 【2】マヨネーズのバリエーションを愉しみましょう。
- 【3】きょうの賄い
- 【4】マヨネーズ、知ったかぶり
- 【5】和食・たまごの素焼き
- 【6】酔中歌(編集後記)
1・「鶏もも肉とアボカドと野菜のサラダ」
2・「茄子のマヨネーズ焼き、秋味」
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私、48年ほど前の秋口にはじめてマヨネーズというものを知りました。友人の家でご馳走になりました。どんな料理に使われていたのかはかは忘れてしまいましたが、マヨの感触は覚えております。ぬるくて、何か異様な味とヌメリ。
あったかご飯にバターを忍び込ませて食うのは好きでしたが、これは飯に合う代物ではないなと、子供ながらに思ったものでした。
マヨネーズは自己主張の強い食材でありまして、ブロッコリーにのせても、カリフラワーにかけても、みな同じ味になってはしまいませんか。食感こそ違いますが、マヨの味しかしませんがな。
そこでマヨラーさんに3つ ご提案。
1.【マヨネーズをご自分で作りましょう】ご自身の味を追求して。
2.【マヨネーズのバリエーションを愉しみましょう】そえるだけではなく いろいろ調理法がありますよ。食材としてのマヨの認識を。
3.【マヨネーズで知ったかぶりをちょっと。】これでマヨラーさん 免許皆伝。居酒屋おやじが太鼓判。うれしくはないか。
【1】マヨネーズをご自分で作りましょう
材料の目安から。
・卵黄:2個分・酢:60cc・サラダ油:300cc・塩:15cc・胡椒:少し・マスタード:15cc。
まず、ボールのなかの水気を拭いて乾かすこと。この中に卵黄、塩、胡椒、マスタード、半分の量の酢(30cc)を入れて、泡立て器でかき混ぜます。
そこへサラダ油を ごく少量たらして手早くかき混ぜます。更にごく少量ずつサラダ油を垂らしながら絶えずかき混ぜます。
このあたりが重要なところで、油を一度にたくさん入れてはダメ。かき混ぜる速度が遅いのもバツ。
サラダ油をすべて入れ終わっても、全体が白っぽくなるまで手をゆるめてはいけませんぞ。
白っぽくなって、少し固めと思われるくらいになったら、残りの酢を少しずつ加え、かき混ぜます。 酢を入れるとゆるくなります。程よい硬さになりましたら、更に1分間、ガマンして混ぜ続けてください。
滑らかなマヨネーズが出来上がりましたでしょう。味をととのえて下さい。かくし味に少しの砂糖や 醤油をポトリたらすのもアリです。少量ですよ。
簡単でしょ。それでも、もし失敗して分離してしまったら、こうしましょう。
イ.新しく固めのマヨネーズを作ります。酢を少なめに油を多めにしますと 固めのものが出来ます。これに失敗作を少しずつ加えて、混ぜ合わせて いきます。当然 最初に予定していたものより、増えてしまいます。
ロ.卵白を泡立てます。これを少しずつ、失敗作に混ぜ込んでいきます。
ハ.今回、マヨはあきらめます。酢や柑橘類の絞り汁を更に加えて、味を調え マヨネーズではなくドレッシングとして生き返らせてあげましょう。
そのときは 再度、マヨネーズ作りに挑むことを誓ってください。
【2】マヨネーズのバリエーションを愉しみましょう
マヨネーズは何かを混ぜるだけでいろいろなマヨネーズソースが出来上がります。
たらこや明太子マヨネーズはよく見かけます。わさびマヨネーズなんてのも土産物屋さんで売っていますね。
・オーロラソース とかいうんでしょ、ケチャップ混ぜたやつ。
・いか墨といかワタを漉して、煮きった白ワインを混ぜると いか墨入りマヨネーズとなります。
・このほか、抹茶、刻み叩いた山椒の葉、味噌、裏ごしした梅干、胡麻、みじん切りの大葉とすり下ろした柚子、、、などなど 際限なくありそう。
・アンチョビソースを混ぜればシーザースサラダに使うドレッシングに近いものが出来ます。
・マヨネーズを作るときに酢をワインビネガーやハーブビネガーにすると、より洋風らしくなります。
・サラダ油をオリーヴオイルに替えればまた別の風味となります。全部をオリーヴオイルでは香りがきついとお思いの方は、オリーヴオイルとサラダ油の併用でお試しを。
・アイオリソースというのがありましょう。ブイヤベース食うときにつけるやつ。アレはマヨネーズに おろしニンニクとレモンの絞り汁を混ぜればOK。茹で蛸や魚のフライのディップでもいけます。
・フライといえば、タルタルソース。これは、混ざるもの少し多いのですが、牡蠣フライには欠かせませんな。そろそろ季節到来ですか。ヨダレが。。。失礼しました。
タルタルソースの中身は固茹でたまご、ピクルス、さらし玉ネギ、ケッパー、パセリ、これを全部みじん切りにして、マヨネーズにまぜる。塩、胡椒忘れずに。
・サウザンドアイランドソースというのもありましたね。これはね、タルタルソースの材料と更にトマト、赤ピーマン、ケチャップが入ります。玉ネギは、いらないかもしれないね。塩、胡椒、パプリカパウダー。
ただ混ぜ合わせるだけでも、たくさんの、バリエーションが出来る訳です。
野菜スティックにそえたり、和え物につかったり、サラダのソースとしても応用してください。
【3】きょうの賄い
1・鶏もも肉とアボカドと野菜のサラダ
作り方。
・鶏もも肉を軽く茹でる。塩を入れてね。このお湯は棄てないで。
・野菜(セロリ、キュウリ、ニンジンなど)をさいの目に切り、さっきのお湯で湯がいて冷水に取り、水気を切る。それぞれの野菜の茹で時間は調節してください。少し歯ごたえがある程度がよろしいかと。
・先の鶏もも肉も野菜の大きさにあわせて切り、再びボイル。今度は中まで火を通すこと。
・アボカド。皮は器として使いますから、ていねいに残して、果肉を取る。
そのやり方。たて半分に切って、種を出し、皮と果肉の間に包丁を浅く入れ、皮に沿ってゆっくりひと廻り。
・果肉に十字に包丁目をいれて、スプーンで取り出す。それを野菜よりやや大き目のさいの目に切る。
・材料、全部を合わせて塩、胡椒。マヨネーズを入れ ていねいに合える。残しておいたアボカドの皮につめて出来上がり。天に パセリのみじん切りとか、シブレットの小口切りとか セルフィーユとかを乗せれば、なおよし。
材料の割合はお好みでよろしいんですが、それぞれの野菜よりも鶏肉とアボカドを多くしたほうが調和がとれるかとおもいます。
・マヨネーズに火を入れてお使いになるなら、ジャガイモや白身魚や貝(カキやハマグリ)などにかけてオーブンなどで焼くというのもあります。
マヨのなかになにかまぜてから乗せてもいいですね。エビとか炒めたきのことか。この場合、白身魚などは先に火を入れておいた方がいいかもしれません。
・鶏がらスープの中に、マヨを溶かして焼いたもちを入れて雑煮風なんてのも出来ます。マヨを入れたら沸騰さてはいけませんよ。
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2・茄子のマヨネーズ焼き、「秋味」
材料:茄子・しめじ・舞茸などきのこ・銀杏(ぎんなん)・帆立貝柱・ハムかベーコン。
作り方。
・ヘタのついたままのナスを縦にして、3分の1ほどのところを切り落とす。3分の2のほうの果肉をくりぬいて、さいの目に切る。3分の1のほうも さいの目に切る。これをバターで炒めて、塩、胡椒。
・きのこも さっとバター炒め。ホタテ貝柱は湯に通してさいの目に切り、これも軽く炒めておく。銀杏はカラと薄皮をとっておく。
・ハムかベーコンはアラレに切る。材料全部をマヨネーズであえて、さっきの果肉をくり貫いたナスに詰めてオーブンで焼く。
・きのこ、銀杏が入るから「秋味」。いろどりとして赤いものがほしい場合はエビを入れるとか、ホタテ貝を北寄貝(ホッキガイ)にするとか。
・ナスに合いそうなものなら何でもかまいません。
炒めて和えて詰めて焼く。お試しください。
【4】マヨネーズ、知ったかぶり
18世紀中ごろ、ルイ15世の時代、フランスとイギリスの紛争が勃発。フランス軍はイギリス領である地中海の島、ミノルカ等を占領。
ここにはマオン(Mahon)という港町がありマヨネーズはここの伝統ソースでありました。このソースにフランス軍の元帥リシュリュー公が魅了されてしまった。製法を故国に持ち帰り、マオン風ソースと命名。MahonnaiseがMayonnaiseとなり、世界中に広まったというのが 有力な説。
日本では大正14年、キューピーの創設者、中島薫一郎が製造販売。第2次大戦中は中止したが、戦後昭和23年製造販売再開。
以上で、マヨラーさんへのご提案、終わりですが、さらに上級をめざすマヨラーさんへ宿題を出しておきます。
◎お店で売っているマヨネーズは冷蔵ケースに入れずに普通の棚に陳列しています。常温保管ですね。腐らないのですか。
◎ドレッシングは ほっておけば分離してしまうのに、なぜマヨネーズは分離しないのですか。
【5】和食・たまごの素焼き
和食の修行をしてきた板前さんは、マヨネーズ作りが得意な方多いんです。
実はね、日本料理にもマヨネーズと似た作り方をするものがありましてね、「たまごの素(モト)」と言うんです。
酢は入れませんが、あとはおなじ。これは、味にコクを出すために、魚やエビのすり身に混ぜて使います。
あるいは、魚や牡蠣にかけて焼く「もと焼き」と言うのもあります。
もと焼きのバリエーションとしては、野菜を湯がき、すりおろして混ぜるなど、味付けやいろどりに、工夫を凝らすこともあります。
漢字は「素焼き」でいいのでしょうが、「すやき」と間違えてもいけませんから、ひらがなにしておきます。
漢字といえば、マヨネーズの材料である「たまご」ですが、「卵」と「玉子」をどう使い分けていらっしゃいますか。生物学的意味では「卵」、食材としての「玉子」というところでしょうか。
私のところでは調理前を「卵」、手を加えたら「玉子」としています。
「茸に たまごをとじてくれ」とお客様のご注文は卵。まだ調理前ですから。
お出しするときは「茸の玉子とじ、お待ちどうさま。」
音は同じですけど。
【6】酔中歌(編集後記)
♪Left Alone ・ 1959 (w)Billy Holiday (m)Mal Waldron
マル・ウオルドロンのアルバム『Left Alone』の第1曲として有名な同名の曲。
詞はビリー・ホリデイなのですが、彼女の歌はありません。ビリー・ホリデイの伴奏者でもあったマル・ウオルドロンが、彼女を偲んで後から曲をつけたようです。
このアルバムでは、ジャッキー・マクリーンのアルトサックスがビリー・ホリディの歌声なのでしょう。
■もうじき土曜になります。今、金曜の深夜。お客様も店の連中も、もう帰ってしまいました。(♪I'm left alone , all alone)
ちびりちびりやりながら、キーボード叩いておりますが、小腹がすいてきました。冷蔵庫の中をのぞいてまいります。
ひじきをマヨネーズで合えた、賄いの残り物が。若い者が用意しておいてくれたんですが、正直、マヨネーズは今夜はもう結構。ひじきの煮物のほうがうれしかったなあ。
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