■003号■夏の刺身は洗いとたたき (後編)

いらしゃいませ。
 
 

なんか、おすすめの魚とかあります?』 

 
今日はかつおが入っております。
 
 

おっ、初ガツオか、いいすっね。タタキとかできます?

   
 
はい。
 
 

それから、薬味にニンニクとかもおねがいします

 
かしこまりました。「とか」もご用意いたします。(こまったね)


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  ●きょうの品書き(目次)●    

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【1】刺身 その3 〔たたき とは〕

「とか」は「甲とか乙とか」など
2つ以上のものを並べるときに使うんじゃなかったかな。
お客様の「とか」を類推できないんだよね、あたしは。修行が足りないね。

 

さてきょうは「たたき」のお話。たたきには、鰹(カツオ)のたたき とか、鯵(アジ)のたたき とか、牛肉のたたき とか があります。
この3つ、「たたき」 とは申しますが、その調理法は夫々ちがいます。

 共通点は何かで叩く(たたく)ということ。〔たたく〕は、
動詞ですから、その名詞形が〔たたき〕でしょ。

 すみません。先日、町内の シニアのための語学教室に参加して以来、
文法用語がつい ほとばしるように なってしまいまして。

 たべものとしての「たたき」 とは 本来は塩辛(たたき塩辛)のことだそうな。
魚などの材料を細かくたたいた料理を言うんだそうです.

 塩辛は古くは、魚醤(ぎょしょう)と同義語(文法用語がまた)だと。
古くは、どのくらい前なんだと お訊きになるんですか。
 まあ、奈良時代から後でしょ。先を急ぎましょう。あたしにも都合が
ありますので。

 魚醤(ぎょしょう)はご存知ですよね。魚介を発酵させて、できた
調味料。秋田は〔しょっつる〕能登なら〔いしる〕または〔いしり〕。
香川で〔いかなご〕。

 〔ナムプラー〕はタイ。〔ニョクマム〕はベトナム。
ラオスでは〔ナムバー〕。〔トッ・クライト〕カンボジア。
魚露(ユイルウ)〕中国。ミャンマーなら〔ナムビャエイ〕。ふうっ。

 アジアだけではありません。紀元前の古代ローマにも〔ガルム〕という
魚醤があったといいますから、おどろき。アンチョビのソースなんぞは、
それの名残りでしょうね。

 お国が違うのですから、それぞれ原材料、手法は違いましょうが、
魚食う国、魚醤ありと、言えない事もない。(文法語では2重否定)

 たたき とは たたき塩辛の 接頭語であり 魚醤とも類義語であった。
これらの基本単語を おさえていただいた上で 次に進みます。

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【2】鰹(カツオ)は手でたたく

  
  

 カツオのたたきは、ご存知でしょうが おさらいしておきましょう。

 皮のついたまま、節どりしたカツオに金串を打ち、藁火(わらび)に
かざして焼き、冷水にとる。やや厚い刺身にして、薬味や二杯酢あるいは
土佐酢などの合わせ酢をかけ、手でぺたぺた とたたいて味をなじませる。

 それで、たたきと名づけられた。まだ脂の薄いカツオの調理法。
土佐づくりが有名。   おさらいはここまで。

 まあ、こう言っちゃあなんですが、本式に藁火を使う店は少ないでしょう。
それに、手でぺたぺた は やっていないんではないかと、おもいますよ。
包丁の腹でたたくことは やるかもしれません。

 むしろ、薬味や合わせ酢を工夫したカツオのたたきが主流でしょう。
それで、昨今は たたくのではなく、土佐酢やポン酢醤油などの合わせ酢を
かけたものを、たたき とか たたき風などとよぶのでしょう。

先ほども、申しましたように 本来は まだ脂の少ない 上りカツオの
食べ方なんですね。ですから、初鰹(ハツガツオ)に適しているんです。

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【3】 初鰹のお話をもすこし、やりましょうか。

 お客さん!初ガツオときますと、必ず出てきますね。例の俳句。去年も
おととしも、おしゃっていましたよ。これ。

 目に青葉 山ほととぎす はつ松魚(かつお)   素堂

それに、あのせりふ。いつもですね。”女房質に入れても・・・”ってヤツ。
カツオ召し上がる度ですね。江戸っ子じゃないでしょ。ホントは。
あ、怒らないでください。帰っちゃダメですよ。これからですから、
あたしの知ったかぶりは。

 俳人、山口素堂(1642-1716)はこの初ガツオの句で有名ですが
江戸ではなく大阪の人だったそうです。松尾芭蕉とも親交深かったようです

 芭蕉には

 鎌倉を生きて出でけん初がつお    芭蕉

の句があります。江戸に入るカツオは鎌倉沖、相模湾でとれたってこと
ですね。 

 江戸時代、初カツオはいくら したのでしょう。

 江戸の町を、天秤棒かついで〔かっつをー、かっつをー。〕と売り歩く
魚屋が登場するお芝居(歌舞伎)があります。

 〔髪結新三(かみゆいしんざ)〕。お若い方はごぞんじありますまい。
知らないからといって、若いとはかぎりませんが。

 原題を〔梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)〕
黙阿弥(河竹黙阿弥。1816−1893)の作品。ですから、主人公は
泥棒や悪党に決まっています。新三(しんざ)は上総無宿(かずさむしゅく)の
入れ墨物です。

 お客さん、眠そうですから、端折っちゃいますが、朝帰りの新三が登場する
少し前に、威勢のいい売り声とともに魚屋があらわれるのです。宵越しの
銭はもたねえという、新三ですから 高かろうがためらわず購入。
初ガツオ1本3分。

 

当時の貨幣はいわば4進法。1両は4分。1分は4朱。だから1両は
16朱。
 かなり大雑把に、1両は今の6万円くらいとしましょう。

    6萬円×3/4両=4萬5千円

 お客さん、さっき召し上がったカツオのたたきが税込み@1100円。
安いね。うちは。

 江戸時代の初カツオが高かったことがわかる話を もうひとつ。

 文化9年(1812)旧暦3月25日。 初カツオ1本 2両1分。
文化年間ですから、1両を今の2万円くらいとしてみましょう。

 
   2万円×2.25両=4萬5千円
 

 記録があるんです。太田南畝(おおたなんぽ)というひとの
壬申掌記(じんしんしょうき)〕。その日、魚河岸(当時は日本橋)に
入ったカツオ、17本。将軍家お買い上げ6本。3本が料亭八百膳、残り
が一般売り。

 このように値のはるカツオも 端午の節句(旧暦5月5日)が過ぎると、
安くなっていきます。
 〔落ちぶれるものは鰹の値段なり〕という、ことわざがあるほど。

 でもね、 秋口から出回る戻りガツオは、脂がのって旨いものです。 
その時節になりましたら、またカツオの話で一献といきましょうか。

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【4】きょうの賄い 〔キュウリのたたき〕

 野菜で たたき といえば たたき牛蒡(ゴボウ)ですが、きょうのは
たたき胡瓜(キュウリ)。
曲がりキュウリでいいですよ。叩いちまうんですから。塩もみしてから
洗い流してください。

  •  ・縦半分に切る。
  •  ・ビール瓶やスリコギでたたく。やさしくね。飛び散らぬよう布巾などを
    被せて上からたたいてもいいでしょう。
  •  ・長さ2、3cmに切る。
  •  ・漬け汁につけ、冷蔵庫で30分。残ったら明日もたべる。つくり置き
    できるという意味です。
  •  ・漬け汁:醤油、酢、ごま油、砂糖、唐辛子。

ネギやショウガのみじん切り、を入れたらなおよし。
 カニほぐし身(缶詰でも何でも)を和えたら さらによし。
 お好きならトウバンジャンを。
・私には溶き芥子を添えてください。白髪ネギもね。よく晒してね。

叩き胡瓜

 

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【5】酔中歌(編集後記)

 
   ♪I Can't Get Started  邦題: 言いだしかねて
 
1936 曲:Vermon Duke 詞:Ira Garshwin

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 ■このメールマガジンのタイトルを決めるとき、
いくつか案をつくり、さる方に相談したんです。
 2,3、案を出しまして、これなら悪くはない、
という感じでしたので、この題にきめたのでした。
 おフザケみたいで、言いだしかねて お蔵にしてしまったものに、
こんなのもあります。
 台所、厨(くりや)のことを勝手(かって)ともいいますね。
 それで、
勝手にしやがれ』。
 ゴダール監督、ベルモンド主演、'59年の映画、〔勝手にしやがれ〕 から。
 建築用語本では、勝手の語源は〔糧(かて)を炊(かし)ぐ場所〕だからと
いうのが、諸説ある中で 真相に近い、とあります。
 諸説の中にはこういうのも、あります。
 弓道では、弓を支える手を〔押し手〕。弦(つる)を引っ張る方の手、
つまり自由に動かせるほうの手をを 〔勝手〕、と言うそうですな。
 女性が自由に使えるのが台所。それで勝手と呼ばれるようになった、と。

■ひとつのことしか言わぬのに「とか」を付ける,若者言葉が気になっていました。
でも、年寄の私たちも似たような言葉を 以前から使っているようです。
「お時間ありましたら、お酒などいかがですか」
「お時間ありましたら、お酒でもいかがですか」 
この「など」「でも」は「とか」とおなじ用法でしょうか。限定せずに言う、ある種の気遣いかもしれません。
若者だって気をつかっているんだぜぃ

■邦題、〔言いだしかねて〕は誤訳だそうですね。詞の内容と合わないって。
  誤訳なれど名訳。  酔いがまわってきたアタシは迷惑。。。。
  おやすみなさい。
  ありがとうございました。

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